帰国談

3/27

 

大学が今期全てを閉めることを正式に決定する。来期は9月始まりのため、帰国を決断する。

 

3/28

 

同じく帰国を決めた友人たちと、フランクフルト発羽田着の便に乗る。航空会社が飛行機の数を制限している都合で、日本人が意外とたくさんいる。留学先から引き上げる高校生の軍団、小さい子供たちとその家族(4/1の異動なのだろう)、そして楽器を持っている恐らく音大生らしい人たちがそこそこいた。外国から日本行きの便だとしても、日本人乗客率がほぼ100%というのは見たことないので新鮮。機内食は1種類、ドリンクはペットボトルの水を2本支給された。わかる範囲で誰も咳をしていなくて、ひとまずは安心した。

 

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3/29

 

羽田に着いた。職員さんたちの対応を見ていて、現場が混乱しているんだろうなと少し不安になった。狭めのスペースと大量の乗客を前に、マスクをせずに対応している事務職員さんもいる。

 

PCR検査を乗客全員が受けた。現在外国から日本に入る人たちは、公共交通機関を使わずに帰ること、14日間の自主隔離を行うことが要請されている。しかし現場では「PCR検査の結果判定には時間がかかるため、公共交通機関を使わずに帰る方は判定が出る前に帰ることができます」とのアナウンスが流れる。つまり、ここにいる全員が判定前に帰れると言いたいのか、それとも公共交通機関とわざわざ言うあたり、判定が陰性だとわかったら公共交通機関を使って帰っても良いのか、その真意がよくわからなかった。

 

また、地方の人たちが自家用車で帰る場合は高速のサービスエリアなどでお手洗いを利用することがある。言われた言葉を書くが「もしサービスエリアやレストランに行く場合、どこに何時から何時まで立ち寄ったかを記録しておいてください」とのことだった。この時点で、症状なしの陽性の疑いがある人間たちが、空港から自宅間の何かしらの施設を使うことは致し方ないとされているのは間違いない。実際私もサービスエリアのトイレに行った。

 

一連の空港の動きで、少し曖昧な物言いや、真意の汲み取りにくい発言、どこまでが許されるのかを個人の判断に委ねるような発言があると感じた。これは日本人の話し方の特徴の一つだと思うけれど、感染病の予防に対して非常に相性が悪いだろう。

 

3/30

 

自主隔離1日目。帰国の翌日から数えて14日間の隔離なので、4/13から自由に行動出来るようになる。しかし、正直日本の状況がさらに悪化しているのは避けられないだろうと思っているので、隔離明けも生活は大して変わらないだろう。予約時に隔離目的の宿泊と伝えてあるため、連泊期間中の掃除を断ったところ、驚かれて聞き直されたことに驚いた。一応隔離なので…汚くしないので…そういう生活外国で慣れてるので…のどれも思ったが言えず、ただの不精不潔な人と思われていそうで泣ける。その後ニュースを見ていて、志村けんさんが亡くなったと知った。PCR検査結果はまだ来ない。

 

3/31

 

18時くらいに検査の結果の連絡が来た。陰性だった。週明けから実家に移動して良いと、親からお許しが出る。

 

 

 

これは私の体験だし、万人にこれが当てはまるとも思えないが、個人的な感覚について記録しておく。

 

今スイスは人口100万人に対しての感染者数がイタリアと並んでいる状態だ。さらに住んでいるチューリッヒは、国内4番目に感染者数の多い州。私の住んでいる学生寮にも、感染者、濃厚接触者(全員寮で自己隔離中)がいた。そんな中で単位取得のためにトラムに片道45分乗り、毎日移動をする必要があったため、なかなか身の危険は感じていた。スイスは外出禁止令が出ておらず、正直街中にアホな若者はいたし見た。

 

こういう環境の中だったが、かからない・うつさないよう人に出来るだけ近づかないために、キッチンは可能な限り彼らと時間をずらして使用し、とにかく部屋を換気し、手洗いうがいをし、手で顔に触れず、トラムやバスに乗る際は人と距離をとり、咳をした人からは離れ、人とシェアするスペースに行く際は自身と他人の体調を確認し、部屋に入る前にアルコール消毒をして手のウイルスを部屋に持ち込まない、とかを徹底してやっていた。当然自分は比較的健康なおかげで防げていたのだと思うが、世の中で言われている対策法はちゃんと効果的だと感じた。

 

もし自分の生活や環境が万全じゃないと分かっている場合でも「可能な限り」で良いので対策をすると、感染を防げる可能性が高められるかもしれない。

 

実際今の行政を見ていると、今より強く指示を出すことも、補償に対しても柔軟に動くことができず、すぐに対策が打てないんだと感じる。それにしてもお肉券などの頓珍漢なことをやっているので当然愚策だし叩かれるのもわかるが、市民が望む「補償があれば休業に踏み切れる」というのはいつになるかわからない。

 

自身が防げることをやって、ガンガン意見も出して、今はやれることやっていくしかないなと感じる。とりあえず私は日本でフリーランスで音楽家やっていくのは無理だと今回強く感じました。